菊水通信

2019年12月08日

晩酌のお供にしたい「酒ペディア」〜江戸時代のお酒事情

古くから親しまれてきた日本酒は、奈良時代に製造方法が確立されたといわれています。長く正月や祭礼に用いられていましたが、江戸時代には庶民にも広く飲まれるようになり、居酒屋が1800軒以上あったとされます。お酒はどのように流通していたのでしょうか。当時の飲み方とともにご紹介します。   「水増し」の語源にもなった、酒の流通 江戸時代に酒どころといえば上方の摂泉十二郷、現在の兵庫県北摂津地域から大阪湾一帯でした。上方から船で江戸に運ばれてきていた清酒は「下り酒」と呼ばれて人気がありました。 当時、酒税を払うのは酒蔵だったため、アルコール度数の高い酒を作り、問屋を通るたびに水で薄められるということが横行。これが現在でも使われる「水増し」の語源といわれています。 幕府は江戸周辺の食品製造業を盛んにしたいと考えていましたが、酒は上方に分があったため、江戸周辺では醤油やみりんなどの製造が推奨されました。今も醤油の味が東西で異なるのは、この頃の名残りがあるためだとされています。   江戸の町には居酒屋が1800軒以上あった 時代劇や時代小説によく登場する居酒屋ですが、江戸時代は1800軒以上の居酒屋があったそうです。酒屋の店先で居ながらにして飲むスタイルが主流でした。 当時の江戸は男女比が2対1だったといわれます。参勤交代で侍が多く、地方から労働力としても男性が集まって独身男性が多かったことから、食事をしながら晩酌ができる居酒屋の数が増えたと考えられています。 居酒屋では里芋の煮っころがしや冷奴などの豆腐類、数の子や鮭など海産物の塩漬けなどがメニューに並んでいました。また江戸前の魚の刺身やマグロとネギのねぎまなどの焼き物や、ゆでダコなども人気が高かったようです。   江戸時代のお酒の飲み方 現代では清酒を冷やして飲むことも多いですが、江戸時代は一年中熱燗を飲むのが主流でした。これは江戸時代が寒冷期で、現代よりずっと気温が低かったことだけが原因ではないようです。 安土桃山時代に来日し、織田信長に謁見したポルトガル人宣教師ルイス・フロイスが記した『日欧文化比較』には、日本人は一年中酒を温めて飲むという記述があります。 日本人は遺伝的に、アルコールの分解酵素が少ない人が多いことが科学的に証明されています。酒を温めてアルコールを飛ばした燗酒が好まれてきたのは、このことが理由なのかもしれません。   江戸時代をイメージしたお酒「節五郎元禄酒」 菊水酒造では江戸時代の庶民が愛したお酒をイメージした『節五郎元禄酒』を製造・販売しています。元禄期に珍重された「甘みのある油のような酒」の味わいを再現した濃厚芳醇で、力強く押しのあるお酒に仕上がっています。 製法は当時にさながらに、酒米は削らずに精米具合は90%。麹の割合を高くすることで甘みが強調され、仕込み水も極端に少なくして濃厚な飲み口に仕立て上げました。 濃厚芳醇な『節五郎元禄酒』は、よく冷やすか、氷を浮かべる飲み方が合います。昔の人も暑い日には、氷室から氷を持ってきて酒に浸して楽しむということもあったそう。江戸時代の酒の飲み方を真似して水で割ると、酒の持つ強い酸味が強調され、爽やかで飲みやすくなります。お湯で割ると酒の強い甘味が強調されて柔らかな飲み口が楽しめますよ。 江戸時代の暮らしやお酒の歴史に想いを馳せながら、『節五郎元禄酒』を楽しんでみてはいかがでしょうか?  

2019年12月07日

今も昔も皆大好き健康食品 甘酒

甘酒、ブームですね。〈飲む点滴〉と形容されることも多く、スタイル良く美しいモデルさんの「甘酒大好き!」発言もあり、なんだか最近のおしゃれなドリンクサプリのように思われる方も多いようですが、実は長い歴史を持つ日本伝統の栄養飲料なんです。   古代に始まり室町時代に普及した甘酒 江戸時代中期の図説百科事典『和漢三才図会』には、『天子醴酒(あまざけ)を神祇(じんぎ)に献じ給ふ』という記載があり、古代日本においても天皇が司る神道祭祀において醴酒(甘酒)が神にお供えされていたことが読み取れます。   室町期には、甘酒の行商が出現するほどに庶民の間にも普及してきており、江戸後期の天保年間(1831年-1845年)になると、お祭りや縁日の時に神社仏閣の境内で『甘い、甘い、あまざけ~、あまざけ~』と掛け声をかけて甘酒を販売する露天商が急増したそうです。   同じ江戸の頃の生活様式を記した古文献「守貞漫稿」には「江戸京坂では夏になると街に甘酒売りが多く出てきて甘酒を売っている。一杯四文である」と記されています。江戸幕府は庶民の健康と栄養状態の改善のため、大きな負担なく甘酒を購入できるように、甘酒の価格を最高四文として規制していたそう。甘酒が夏の季語として詠まれるようになるのもこの頃です。   歴史を紐解けば、古代から近代まで甘酒が日本人の生活に欠かせないものであった事は明白。栄養分析など出来ない時代、官民問わず多くの人の実体験として甘酒が美味しいだけでなく、栄養たっぷりで健康に良いことを知っていたのですね。少々大げさに言うなら、歴史に裏打ちされた日本伝統の栄養食品甘酒!といったところでしょうか。   紅梅色の麹あま酒 古い文献によると、甘酒には一夜酒、醴、古酒、口酒、濃酒といった呼び方・書き方があったそうですが、このほかにも甘酒の白色を富士山麓の景色になぞらえ、詩情豊かに『三国一』『白雪』といった名前もあったのだとか。売り場に並んだ甘酒たちの白い姿を見れば、さもありなんといった感じです。   白い甘酒が並ぶ中にあって、菊水の「十六穀でつくった麹あま酒」は異彩を放つほんのり赤紫色。黒大豆や小豆、もち黒米に含まれるアントシアニン(植物性色素)による色合いです。日本の伝統色名で表すと「紅梅色」でしょうか。   日本人は古来より自然と寄り添う暮らしの中で、季節の移ろいに多彩で繊細な色を見出し、その豊かな情趣を愛で、風雅で美しい名をつけてきました。 前出の紅梅色とは、早春に咲く紅梅のやや紫みのある淡い紅色のこと。ほかにも萌黄色は、春先に萌え出る若葉色。東雲色とは、夜が明け始める頃の白み始める東の空の色のこと。このように日本の伝統色名には、草花、空、陽光などが刻々と移り変わる瞬間、つまり刹那を美しいとする日本人の美意識が表現されています。 比して西洋の伝統色名には、バーミリオン、エメラルド、ウルトラマリンなど鉱物の色名が多く見受けられ、不変、つまり永久に変わることのない美にこそ価値を見出しています。伝統色名は私たちに日本と西洋の美意識の違いを教えてくれますね。   古来より日本人が親しんできた甘酒を飲むときに、私たちのDNAに組み込まれているであろう日本人ならではの美意識に目を向けてみるのもまた、一興かもしれません。   『十六穀でつくった麹あま酒』商品情報 [caption width="803" align="alignleft"] 十六穀でつくった麹あま酒[/caption]   モノとコトの融合でお酒の新たな魅力を追求する『菊水通信』ブック版はこちら。

2019年12月06日

生原酒が熟成するとどうなるの?味わいと香りを分析

1972年、日本初の缶入り生原酒として誕生した『ふなぐち菊水一番しぼり』は、毎日の晩酌としてはもちろん、旅行やアウトドアなど、あらゆる場所で楽しめるお酒です。『ふなぐち』は火入れ(加熱処理)を行わない生酒で、しぼりたてのフレッシュな味わいを楽しめるのが特徴ですが、「冷蔵庫などで熟成させるとおいしい」というお客様の声から、『熟成ふなぐち菊水一番しぼり』も生まれています。今回は、成分分析を使って、熟成による味わいと香りの変化に迫ります。   生原酒を熟成させるとおいしい!? 生原酒は、加熱処理や加水処理をしないフレッシュな瑞々しさが特徴のお酒です。菊水酒造が『ふなぐち菊水一番しぼり』を日本初の缶入り生原酒として発売したのは1972年のこと。それ以来、晩酌から旅行や山登りのお供として、幅広く愛されてきました。 しぼりたてのフレッシュが特徴の『ふなぐち』ですが、いつしか熟成させるとおいしいという声が聞こえてきました。なかには、自宅の冷蔵庫などで寝かせて熟成具合の変化を楽しんでいるというファンも。 そんな声に後押しされて1996年に誕生したのが一年以上低温熟成させた『熟成ふなぐち菊水一番しぼり』。しぼりたてとは違うコクのある味わいとトロリとした口当たりが楽しめる熟成酒です。   仕込み年度の異なる生原酒を分析。味わいや香りの変化が! 「味香り戦略研究所」による分析(2018年)を元に、仕込み年度の異なる3種類の『ふなぐち』を比較しました。 『熟成ふなぐち菊水一番しぼり』の容器に記されている製造日とは、容器に詰めた日ではなく、一年以上の熟成期間を経て、商品化された日付けです。 味わいチャートを見ると、2018年9月製造の『ふなぐち菊水一番しぼり』はフレッシュな酸味が特長で全体的にバランスが取れています。 2018年9月に製品化した『熟成ふなぐち菊水一番しぼり』はコクが強く、酸味は穏やか。うま味や熟成感が強く、これぞ熟成した日本酒といったデータになりました。 10年熟成酒として分析した1998年4月製品化の『熟成ふなぐち菊水一番しぼり』は酸味とコクが控えめ。熟成感がぐっと増し、芳醇な味わいを示すデータになりました。飲んでみると紹興酒やブランデーにも似た豊かな香味が感じられます。 また、2018年の『ふなぐち菊水一番しぼり』を基準とした香り成分分析結果を見ると、時間が経つと熟成香の成分が増大していくことがわかります。 好みの熟成度合いを探そう いろいろな味わいを楽しめるのも日本酒の面白さ。熟成の度合いで味わいや香りの変化が感じられるのも生原酒ならではの魅力です。しぼりたてのフレッシュさや、熟成が進んで生まれる芳醇なまろやかさを飲み比べて、自分好みの熟成度合いを見つけてみてはいかがでしょうか。 10年熟成の『ふなぐち』は、菊水本社のショップでお求めいただけます。   協力:味香り戦略研究所 【ショップ情報】 https://www.kikusui-sake.com/home/jp/labo/   『ふなぐち菊水一番しぼり』商品情報 https://www.kikusui-sake.com/funaguchi/index.html 『熟成ふなぐち菊水一番しぼり』商品情報 https://www.kikusui-sake.com/home/jp/products/p002/   「熟成酒の味わい」についてはこちらでも紹介しています。 ブック版 菊水通信vol.6

2019年12月06日

菊水の辛口が飲める、常連になりたいお店をご紹介。新橋「雪國」

200軒ほどの酒場がひしめく新橋は、サラリーマンのオアシスなんて言われている。 そんな路地裏の一角にある居酒屋「雪国」は、昭和55年7月7日、七夕に産声をあげた。それも「菊水の辛口」が誕生した2年後のことである。 藍染に白抜き、雪山がモチーフにされた小ぶりな暖簾をくぐると、店内はいい具合に狭小でカウンター9席のみ。店を切り盛りする女将、石黒千賀子さんの人柄に吸い寄せられるように、毎夜サラリーマン、OLが集い賑わっている。 お勧めの肴は「鯵の甘酢煮」、季節の「自家製カツオのたたき」、「キャベツとコンビーフ炒め」など。酒は各種揃えているが、なんと言っても店の看板に掲げられた「菊水の辛口」がメインだ。 「開店したばかりのころですね、新潟の姉から『新発田の菊水が金賞を取って人気があるらしいわよ』って聞いたものだから。それで扱うようになったんですよ」 「と言うことは、開店から38年間ず~っと菊水の辛口置いてるんですね。ちょっと一杯いただけますか」 「どうぞ。5時から6時半までタイムサービスなんですよ」 一杯500円の「菊水の辛口」が、その時間帯だけ破格の300円で提供されている。いや~飲み助にはありがたい。 「タイムサービスで6、7杯飲む人いるんですよ…」 「そりゃ凄い!」 冷え冷えのグラスでクイっと一杯、キリっと辛口でほどよい旨味。「鯵の甘酢煮」をいただきながら、また一杯。 「やっぱ美味しいな~」 「このお酒、飲みやすいのは当たり前なんですけど、料理の味を邪魔しないんですよね」 確かに。キレのある口当たりだけど、スッキリとし過ぎない味わいがどんな料理にも合うのだろう。甘口、または淡麗が際立つと途中で飲み飽きてくるけど、この酒はほどよい旨味も手伝って、いつまでも飲み続けることが出来るのだ。 「カツオのたたきもどうぞ」 カツオに薬味をタップリ乗せてカブリつく。 「菊水おかわりください」 「ね、進むでしょう」 「菊水の辛口」は突き抜けた個性があるお酒じゃない。でもどんな場面でもいつでも安心して飲める普遍的な味わいが潜んでいる。これが日本酒党に長年愛され続ける最大の理由だろう。 「3杯目おかわりします?」 「はいお願いします。ついつい飲んじゃいますね」 開店から38年という「雪国」の営みは、新橋にどっしりと根を下ろした燻し銀の趣がある。 女将の人柄、旨い肴と旨い日本酒は、穏やかに心身を癒してゆく。 「もう一杯いただけますか」 「あら4杯目、お強いですね」 酔いに任せてダラダラと時間を貪る、これが酒場の至福のひとときだ。 取材日:2018年6月21日   新橋「雪國」 【住所】東京都港区新橋2-10-9  【電話】 03-3508-9867 【営業】17時~23時(L.O.22時30分) 【休日】土・日・祝 【アクセス】JR各線「新橋駅」銀座口・烏森口から徒歩3分   取材・文/小野員裕   元祖 新潟の辛口酒 菊水の辛口