菊水酒造株式会社の看板商品であるアルミ缶入り生原酒「菊水ふなぐち」が、2022年11月27日に発売50周年を迎えました。2018年には国内累計出荷本数が3億本(※1)を突破し、全国のスーパーやコンビニエンスストアなどでも購入できるようになった商品ですが、かつては蔵でしか味わうことができない門外不出のお酒でした。しぼった後の割水と火入れ(加熱処理)を一切施すことのない生酒は、その品質のデリケートさから市場に流通させることは難しく、当時の業界の常識では考えられないことでした。本ストーリーでは、日本初の缶入り生原酒(※2)「菊水ふなぐち」の誕生から現在に至るまでの軌跡についてお伝えします。
3年におよぶ試行錯誤。開発のプロセス
大手にはできないことをしなければ。考え抜いた末に思い当たったのが、酒蔵来訪者だけに振る舞っていた、蔵でしか飲めない、しぼりたての生原酒でした。おいしいと好評でしたが、当時の技術では商品化することができなかった酒です。
一般の日本酒は、品質を保つため火入れと呼ばれる加熱殺菌して市販されます。腐敗の原因となるのは、昔から酒蔵を悩ませてきた火落菌。生のお酒を世に出すことは当時の業界の常識では考えられないことでした。それでも「できたての酒って、こんなにうまいんだ」「これを売ってくれ」との声に何とか応えたい想いで、この生原酒を商品化することを決意します。醸造技術を根本から改め、最初から火落菌が入らないよう試行錯誤しました。また、日本酒は紫外線に弱い性質があるため、遮光性に優れたアルミ缶容器を採用しました。そうして3年の研究開発を経て、1972年11月にアルミ缶に詰めた元祖生原酒「ふなぐち」が誕生しました。
「菊水ふなぐち」開発のきっかけとなったお客様の声
1960年代後半、日本経済は高度成長期のピークを迎えていました。大手酒造メーカーは順調に業績を伸ばしましたが、地方の蔵元は逆に圧迫され、転廃業の危機にさらされていました。菊水酒造も例外ではありません。そのうえ菊水は、1966年、67年と続いた大水害によって茫然自失となるほどの被害を被ってもいたのです。廃業へと傾く気持ち。それを引き止めてくださったのは、何よりお客様からの「頑張れよ」という励ましでした。一念発起し、移転再建を決断。69年には新しい蔵が稼動しました。
当たったのが、酒蔵来訪者だけに振る舞っていた、蔵でしか飲めない、しぼりたての生原酒でした。おいしいと好評でしたが、当時の技術では商品化することができなかった酒です。
一般の日本酒は、品質を保つため火入れと呼ばれる加熱殺菌して市販されます。腐敗の原因となるのは、昔から酒蔵を悩ませてきた火落菌。生のお酒を世に出すことは当時の業界の常識では考えられないことでした。それでも「できたての酒って、こんなにうまいんだ」「これを売ってくれ」との声に何とか応えたい想いで、この生原酒を商品化することを決意します。醸造技術を根本から改め、最初から火落菌が入らないよう試行錯誤しました。また、日本酒は紫外線に弱い性質があるため、遮光性に優れたアルミ缶容器を採用しました。そうして3年の研究開発を経て、1972年11月にアルミ缶に詰めた元祖生原酒「ふなぐち」が誕生しました。
缶がバトンのように全国へ。ユニークな販売促進
長い年月を費やして生まれた「ふなぐち」ですが、当初から好調だったわけではありません。日本酒は一升瓶に入っているのが常識で、小さなアルミ缶入りの酒など、どこも取り扱ってくれませんでした。そこで展開したのが、都会からのスキー客や温泉客の多いリゾート地での試飲販売です。とにかく一度飲んでもらえば、このおいしさをわかっていただけると信じての活動でした。
その功を奏して、「ふなぐち」で生原酒を味わったお客様が都会へ帰って、デパートや酒屋で「ふなぐちはおいしい」「ふなぐちはないのか?」と口コミで宣伝してくださいました。こうして少しずつ小売店での取り扱いが増えていったのです。
「ふなぐち」は、蔵を訪れたお客様の「おいしい」という声から生まれ、一度味わったお客様の「おいしい」という声によって広まった酒です。そしてこの「ふなぐち」が、窮地にあった菊水酒造を救ったのは言うまでもありません。お客様の「おいしい」という声がなかったら、今の菊水酒造はなかったでしょう。
しぼりたてのおいしさを届けるために
「ふなぐち」の缶蓋を開けた時にお酒がなみなみと入っていて嬉しい、といったお声をいただきます。実は「ふなぐち」は、本来の容量が一合サイズの180ml規格の缶に、たっぷりと200mlのお酒を詰めています。これはお客様にしぼりたての生原酒を存分に味わっていただきたいという想いと、お酒が空気に触れて酸化することで、フレッシュな風味が損なわれてしまうことを避けるため、というのが理由です。品質保持のためのパッカーンと缶を開けた時のお客様の笑顔、そして、お酒の風味を守るためのささやかなこだわりがここにあります。
瓶ではない理由
しぼりたての生原酒をいつでも、どこでも、手軽に楽しんでいただきたい、そんな志を持った「ふなぐち」は、200ml缶のほかに、500mlのボトル缶や、スタンドタイプのスマートパウチの容器でラインナップを展開しています。これらの容器に共通するのは、日本酒の大敵である紫外線を遮り、お酒の劣化を防ぎ生原酒のおいしさを守ること、そして軽量で携行性に優れ、扱いやすい容器であるということです。
■このカタチ、きっと日本酒の未来を変える「菊水ふなぐちスマートパウチ」
スマートパウチは1.5Lと大容量でありながら、軽量・コンパクトで取り扱いがしやすく環境にも優しいことに加え、遮光性に優れ、開封後の空気の侵入を防ぐ機能性を持ち、しぼりたての蔵出しの味を最後の一杯までお客様に味わっていただける優れもの。瓶よりもかしこく、スマートに。菊水がたどり着いた新しいおいしさ「長持ち」のかたちです。
1972年11月、日本の高度成長期に誕生した「菊水ふなぐち」は、これからもみなさまの暮らしに寄り添いながら、いつでも、どこでも、詰めたてのおいしさをお届けする原点にたち、発売当初からの志を大切に、この酒を醸し続けてまいります。
■菊水通信:「菊水ふなぐち」関連記事
https://www.kikusui-sake.com/book/vol19/#target/page_no=7
https://www.kikusui-sake.com/book/vol21/#target/page_no=7
※1:1972年10月~2017年11月(出荷ベース・自社データ)200ml缶のみ
※2:1972年11月に日本で初めて生原酒缶を商品化 (株)コミュニケーション科学研究所調べ(2010年1月)
※「ふなぐち」は菊水酒造株式会社の登録商標です。