2019年12月07日
甘酒、ブームですね。〈飲む点滴〉と形容されることも多く、スタイル良く美しいモデルさんの「甘酒大好き!」発言もあり、なんだか最近のおしゃれなドリンクサプリのように思われる方も多いようですが、実は長い歴史を持つ日本伝統の栄養飲料なんです。 古代に始まり室町時代に普及した甘酒 江戸時代中期の図説百科事典『和漢三才図会』には、『天子醴酒(あまざけ)を神祇(じんぎ)に献じ給ふ』という記載があり、古代日本においても天皇が司る神道祭祀において醴酒(甘酒)が神にお供えされていたことが読み取れます。 室町期には、甘酒の行商が出現するほどに庶民の間にも普及してきており、江戸後期の天保年間(1831年-1845年)になると、お祭りや縁日の時に神社仏閣の境内で『甘い、甘い、あまざけ~、あまざけ~』と掛け声をかけて甘酒を販売する露天商が急増したそうです。 同じ江戸の頃の生活様式を記した古文献「守貞漫稿」には「江戸京坂では夏になると街に甘酒売りが多く出てきて甘酒を売っている。一杯四文である」と記されています。江戸幕府は庶民の健康と栄養状態の改善のため、大きな負担なく甘酒を購入できるように、甘酒の価格を最高四文として規制していたそう。甘酒が夏の季語として詠まれるようになるのもこの頃です。 歴史を紐解けば、古代から近代まで甘酒が日本人の生活に欠かせないものであった事は明白。栄養分析など出来ない時代、官民問わず多くの人の実体験として甘酒が美味しいだけでなく、栄養たっぷりで健康に良いことを知っていたのですね。少々大げさに言うなら、歴史に裏打ちされた日本伝統の栄養食品甘酒!といったところでしょうか。 紅梅色の麹あま酒 古い文献によると、甘酒には一夜酒、醴、古酒、口酒、濃酒といった呼び方・書き方があったそうですが、このほかにも甘酒の白色を富士山麓の景色になぞらえ、詩情豊かに『三国一』『白雪』といった名前もあったのだとか。売り場に並んだ甘酒たちの白い姿を見れば、さもありなんといった感じです。 白い甘酒が並ぶ中にあって、菊水の「十六穀でつくった麹あま酒」は異彩を放つほんのり赤紫色。黒大豆や小豆、もち黒米に含まれるアントシアニン(植物性色素)による色合いです。日本の伝統色名で表すと「紅梅色」でしょうか。 日本人は古来より自然と寄り添う暮らしの中で、季節の移ろいに多彩で繊細な色を見出し、その豊かな情趣を愛で、風雅で美しい名をつけてきました。 前出の紅梅色とは、早春に咲く紅梅のやや紫みのある淡い紅色のこと。ほかにも萌黄色は、春先に萌え出る若葉色。東雲色とは、夜が明け始める頃の白み始める東の空の色のこと。このように日本の伝統色名には、草花、空、陽光などが刻々と移り変わる瞬間、つまり刹那を美しいとする日本人の美意識が表現されています。 比して西洋の伝統色名には、バーミリオン、エメラルド、ウルトラマリンなど鉱物の色名が多く見受けられ、不変、つまり永久に変わることのない美にこそ価値を見出しています。伝統色名は私たちに日本と西洋の美意識の違いを教えてくれますね。 古来より日本人が親しんできた甘酒を飲むときに、私たちのDNAに組み込まれているであろう日本人ならではの美意識に目を向けてみるのもまた、一興かもしれません。 『十六穀でつくった麹あま酒』商品情報 [caption width="803" align="alignleft"] 十六穀でつくった麹あま酒[/caption] モノとコトの融合でお酒の新たな魅力を追求する『菊水通信』ブック版はこちら。
2019年12月06日
1972年、日本初の缶入り生原酒として誕生した『ふなぐち菊水一番しぼり』は、毎日の晩酌としてはもちろん、旅行やアウトドアなど、あらゆる場所で楽しめるお酒です。『ふなぐち』は火入れ(加熱処理)を行わない生酒で、しぼりたてのフレッシュな味わいを楽しめるのが特徴ですが、「冷蔵庫などで熟成させるとおいしい」というお客様の声から、『熟成ふなぐち菊水一番しぼり』も生まれています。今回は、成分分析を使って、熟成による味わいと香りの変化に迫ります。 生原酒を熟成させるとおいしい!? 生原酒は、加熱処理や加水処理をしないフレッシュな瑞々しさが特徴のお酒です。菊水酒造が『ふなぐち菊水一番しぼり』を日本初の缶入り生原酒として発売したのは1972年のこと。それ以来、晩酌から旅行や山登りのお供として、幅広く愛されてきました。 しぼりたてのフレッシュが特徴の『ふなぐち』ですが、いつしか熟成させるとおいしいという声が聞こえてきました。なかには、自宅の冷蔵庫などで寝かせて熟成具合の変化を楽しんでいるというファンも。 そんな声に後押しされて1996年に誕生したのが一年以上低温熟成させた『熟成ふなぐち菊水一番しぼり』。しぼりたてとは違うコクのある味わいとトロリとした口当たりが楽しめる熟成酒です。 仕込み年度の異なる生原酒を分析。味わいや香りの変化が! 「味香り戦略研究所」による分析(2018年)を元に、仕込み年度の異なる3種類の『ふなぐち』を比較しました。 『熟成ふなぐち菊水一番しぼり』の容器に記されている製造日とは、容器に詰めた日ではなく、一年以上の熟成期間を経て、商品化された日付けです。 味わいチャートを見ると、2018年9月製造の『ふなぐち菊水一番しぼり』はフレッシュな酸味が特長で全体的にバランスが取れています。 2018年9月に製品化した『熟成ふなぐち菊水一番しぼり』はコクが強く、酸味は穏やか。うま味や熟成感が強く、これぞ熟成した日本酒といったデータになりました。 10年熟成酒として分析した1998年4月製品化の『熟成ふなぐち菊水一番しぼり』は酸味とコクが控えめ。熟成感がぐっと増し、芳醇な味わいを示すデータになりました。飲んでみると紹興酒やブランデーにも似た豊かな香味が感じられます。 また、2018年の『ふなぐち菊水一番しぼり』を基準とした香り成分分析結果を見ると、時間が経つと熟成香の成分が増大していくことがわかります。 好みの熟成度合いを探そう いろいろな味わいを楽しめるのも日本酒の面白さ。熟成の度合いで味わいや香りの変化が感じられるのも生原酒ならではの魅力です。しぼりたてのフレッシュさや、熟成が進んで生まれる芳醇なまろやかさを飲み比べて、自分好みの熟成度合いを見つけてみてはいかがでしょうか。 10年熟成の『ふなぐち』は、菊水本社のショップでお求めいただけます。 協力:味香り戦略研究所 【ショップ情報】 https://www.kikusui-sake.com/home/jp/labo/ 『ふなぐち菊水一番しぼり』商品情報 https://www.kikusui-sake.com/funaguchi/index.html 『熟成ふなぐち菊水一番しぼり』商品情報 https://www.kikusui-sake.com/home/jp/products/p002/ 「熟成酒の味わい」についてはこちらでも紹介しています。 ブック版 菊水通信vol.6
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