2020年06月03日
「生」といえば、みなさん、生ビールを一番に思い浮かべられるだろうが、いやいや「生」はビールだけじゃない。日本酒にも「生」のつく酒がある。しかも「生酒」「生貯蔵酒」「生詰酒」と3種類も! これらは「生」のつかない日本酒とどこが違うのか、そしてこれら3つはどう違うのか、そこらへんのところをスッキリさせようと思う。 日本酒が、麹菌や酵母といった微生物の働きによって造られるのはご存じのとおり。そして、良い味を生み出すのも、味を崩してしまうのもまた微生物に起因する。たとえば、搾ったあとのお酒の味を変える要因になるのは、麹が生産した酵素。これを防ぐために、通常の製造工程では上槽後(搾ったあと)に「火入れ」と呼ぶ加熱処理が行われる。熱を加えて酵素を失活させて、味わいを保つわけだ。 また火入れには殺菌の目的もある。一般的な日本酒のアルコール度数は15度程度あるので、たいていの菌は生きていられないのだが、「火落菌(ひおちきん)」と呼ばれる乳酸菌はアルコールに強い。酒のなかでどんどん増殖しちゃう。ホントに厄介なヤツで、コイツに汚染されると酒の温度が上昇して白濁し、酸っぱい異臭を放つようになってしまう。いわゆる腐造である。だから火入れは、貯蔵中の腐造を防ぐためでもあるのだ。 「火入れ」の字面からは、相当な高温を想像してしまうだろうが、60℃程度の低温で火落菌はやっつけられる。方法としては、熱湯を通した管や熱交換式のプレートヒーターに間接的に酒を触れさせたり、瓶に詰めてから湯煎殺菌されたり。あまり熱いとアルコールが飛んでしまうので、温度は60〜65℃。また高温のままでは日本酒の香りが損なわれるため、火入れ後は速やかに冷却しなければならない。 通常、日本酒は2回の火入れが行われる。1回目は醪を搾ったあとタンクに貯蔵する前。2回目は出荷にそなえてビンや容器に詰める前。そして、この2回の火入れをまったく行わず、生の状態で出荷される日本酒のことを「生酒」と呼ぶ。火入れの有無や回数、タイミングによって名称の違いは次のように異なる。 <生酒> まったく火入れを行っていない日本酒。加熱処理をせずそのままの状態で出荷されるため、フレッシュな若々しい味わいが楽しめるが、とてもデリケートな酒なので、製造にも輸送にも高度な品質管理が求められる。本生、生々と呼ばれることも。購入後は冷蔵庫保存し、開栓後はなる早で飲み切りたい。 <生貯蔵酒> 生のまま貯蔵し、出荷前に一度火入れを行った日本酒。生酒のようなフレッシュな味わいとまろやかな旨味が楽しる。生酒ほど徹底した品質管理は必要ないが、通常の日本酒と比べると味わいが変化しやすいので、購入後はできるだけ冷蔵庫で保管が好ましい。 <生詰酒> 貯蔵前に一度火入れを行い、出荷前には火入れを行っていない日本酒。生酒や生貯蔵酒に比べ酸味に落ち着きがあり、貯蔵熟成による熟れた果実のような甘い香りとジューシーな旨味がそのまま詰まっている。 秋に店頭に並ぶ「ひやおろし」は、冬から春に造った酒に一度火入れし、夏の間熟成させ、火入れを行わずに出荷されるもので、生詰酒の一種。冷や(生)のまま、卸す(出荷する)という意味で「ひやおろし」と呼ばれる。 「生酒」「生貯蔵酒」「生詰酒」の違い、いかがでしたか? 菊水の「ふなぐち」は生酒のなかの「生原酒」といい、上槽後に一度も火入れをしていないだけでなく、水を加えてのアルコール調整もしていない、本当の搾ったまんま。かつては蔵でしか飲めなかったデリケートな酒だが、高度な濾過技術やアルミ缶採用により常温での流通を可能にしている。 『ふなぐち菊水一番しぼり』商品情報 https://www.kikusui-sake.com/funaguchi/index.html
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